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摂食障害(過食症・拒食症)について

1.摂食障害(過食症・拒食症)は治る病気です

摂食障害は「治りにくい病気」と思われがちですが、適切な治療により治る病気です。

摂食障害への誤った常識「原因は母子関係にある?」「わがまま病?」

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  • 人の成長は母子関係のみで決まりません
  • 父親、両親の夫婦関係、他者との関係、
    生活環境も影響しています
  • やせている女性が美しいとされ、ダイエットを煽っている、社会的風潮
  • 病気に移行していく要因は「やせたい」という気持ちの後ろにある、様々なストレス自信を持てない気持ち
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  • むしろ周囲に配慮しすぎて自分の言いたいことを言えない方が多いです
  • 必要以上に自分を責めてしまうのが特徴です
  • わがままに見える言動は、病気としての症状なのです
  • 病気の症状は、自分の意志でコントロールできません

2-(3)「摂食障害に伴いやすいその他の症状」で、詳細をご覧ください

*ダイエットと摂食障害の違い:きっかけがダイエットでも、健康を損ね、日常生活に支障が出始めてもなお「やせること」にしがみついてしまう、と病気の領域に入ります

2.摂食障害(過食症・拒食症)とは

摂食障害は主に10代後半から20代前半の女性に多く、標準体重(=身長m×身長m×22というBMIを用いた算出方法が一般的)の80%の有無で「拒食症」と「過食症」に分けられる。

(1) 拒食症と症状

客観的にどんなに痩せていても、本人は体重・体型に強くこだわり、自分の意志では振り払えない「太ることに恐怖を覚える病気」

「過食を伴わない拒食症」:ほとんど食べずに痩せていくタイプ。

「過食を伴う拒食症」:過食嘔吐や下剤乱用などを伴うタイプ。

(2) 過食症と症状

過食症は、「食べたい病気」と考えられがち、でも、実は「太ることが怖い病気」

やせることで自分に自信が持てるのではないかと考え、過度にやせようとして反動で過食が起こる。その過食はもはや自分ではコントロールできないほどの強い衝動。

「排出行動を伴う過食症」:過食の後に嘔吐や下剤乱用等を伴うタイプ。

「排出行動を伴わない過食症」:過食のみで嘔吐など排出行為を伴わないタイプ。

(3) 摂食障害に伴いやすいその他の症状

以下に挙げることは摂食障害の方に伴いやすい症状です。一見症状とは思えないようなものもありますが、いずれも患者さんがコントロールできるものではなく、多大な苦しみを感じておられることから、これらは症状としてとらえます(必ずしも全員に伴うものではありません)

(4) 摂食障害に伴いやすい精神の病気

実は摂食障害により、うつ病・うつ状態・不安障害を伴うことは少なくありません。これを、うつ病・うつ状態・不安障害を別に捉えるのではなく、摂食障害の症状として扱います。このため、対人関係療法でもこれらの症状を一緒に治療します。
更に、患者さんによって、摂食障害に根底に、複雑性PTSDがベースになっている場合も少なくなく、摂食障害のきっかけや症状として扱います。このため、対人関係療法でもこれらの症状を一緒に検討し、扱います。

1. 気分の落ち込み、引きこもり

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2. 薬物・アルコール類の過剰摂取

→ 日常生活に大きく支障が出てしまう。

  • 下剤の乱用
  • 睡眠薬、アルコールの過剰摂取(うつ気分を軽減するため)
3. 強迫的なルール
  • ~時以降は絶対に食べない
  • 野菜しか食べない
  • 生活パターンについての強迫的なルールを作り、守れないとパニックになる。
  • また、家族などに自分より必ず多い量、もしくはカロリーを食べてもらうなど、家族に強いることもある。
4. 金銭面へのこだわり、不安
  • 過食のための費用が莫大になり、経済的な不安を抱える。
  • 過剰なアルバイトや借金や万引きを繰り返すこともある。

3.対人関係療法(IPT)を用いた摂食障害の治療

当クリニックでは、「対人関係療法」という精神療法を用いて摂食障害の治療に当たっています。「過食症」に対して効果があると科学的に検証されているのは、今のところ「認知行動療法」と「対人関係療法」だけです。院長坂本も「2011国際IPT学会」および「2012 ドイツ精神神経学会総会(DGPPN KONGRESS)で発表しました

また「拒食の要素の治療」に対人関係療法を組み合わせてもかなりの効果をあげることができています。では摂食障害が治るとはどういうことか、また対人関係療法で目指すことはなんなのでしょうか?

(1) 症状を継続させている要因を探る

摂食障害の方にきっかけを伺うと、「ダイエット」であることが多いのですが、単なるダイエットで終わらず摂食障害へと発展し、症状が継続するのは、患者さんの自尊心の低さや多大なストレスによるものであると考えられます。ですから、対人関係療法ではきっかけよりも症状を現在も継続させている要因について探っていき、それに対処する方法を考えていきます。

※体重記録など患者さんの苦痛になることはしません。

(2) 症状と対人関係

対人関係によるストレスとは

「対人関係」と言うと「私は問題ない」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。

摂食障害の患者さんの多くは、自己主張が苦手で、周囲と軋轢を起こすくらいなら自分が引き受けてしまおう、と波風を立てないように気を使ってこられた方がとても多いからです。しかし対人関係の問題とは、衝突を繰り返すケースばかりではありません。

自分の意思をうまく伝えられず、我慢して知らず知らずストレスをためてしまう、ということはありませんか?

病気による対人関係の変化

患者さんは病気になったことで症状に苦しみ、引きこもりがちになったり、更に自信を無くしたり負い目を感じて、周囲の方とうまく関われなくなってくることが多く見られます。するとご家族や周囲の方もどう接してよいのかわからなくなったり、心配のあまり過度に励ましすぎたり、一緒に落ち込んでしまったりして患者さんとの関係がこじれてしまい、結果的に患者さんのストレスが大きくなってしまうことも考えられます。

ご家族や周囲の方が病気を理解し、患者さんにとって暖かいサポーターとなって信頼関係を築いていくことが、患者さんの治療効果を大きく上げることにつながります。

(3) 症状を無理に押さえ込まない、とらわれない

症状は患者さんなりの自分を守る術

これまで摂食障害の治療の多くは、患者さんの「やせたい気持ち」は悪いこと、「拒食」「過食嘔吐」などの症状を抑えるべきものとされていました。しかし、患者さんがそういった症状を出すことで、現在のつらい状況のバランスをやっととっているのだと考えると、症状自体を押し込んでも苦しさは増すだけ、むしろ押さえ込まれたストレスで更に悪化を招くでしょう。

症状が起こるメカニズムに目を向ける

対人関係療法では、症状そのものには焦点を当てず、症状が出た時に、どんなことがあったのか、どんな気持ちだったのかを具体的に知ることで、症状と出来事や気持ちを結び付けていきます。そしてより良い対処法を一緒に考えていきます。はじめはぴんと来なくても、ここに気づけるようになることで、次に同じようなことが起こる前に対処できるようになって行き、それに伴って症状も自然に治まっていきます。

(4) 対人関係療法で目指すこと

焦らない、完璧を目指さないことが大事

治療を始めたのに、症状がなかなか治まらない、またはいったん治まってきていたのにぶり返した、などで一喜一憂するのはよくありません。完璧に症状が治まらないというところにとらわれてしまうと、そのことがまた新たなストレスとなってしまうからです。

症状の改善は後からついてくる

治療で目指すべきところは、症状の改善はもちろんですが、次に同じような症状が出た場合、その背後にあるストレスや自信のなさに気づけるようになること

そして家族や配偶者など、周囲と信頼関係を築いていきながら協力を得て、ストレスにうまく対処していく術を身につけていくことと言えるでしょう。

この術が身についてくると、自然と少しずつ症状の改善もみられていきます。

4.ご家族のみなさんに

摂食障害の治療には、ご家族のご理解とご協力がとても重要です。

  • 治療の間は「今は症状を出すことでバランスをとっているんだ」と、ご理解くださると、訳が分からないまま「症状」に振り回されずに済む経験が増えてきます。
  • 過食費用についてひどく自己嫌悪に陥っていらっしゃいます。ご家族に言えず、無理なアルバイト、借金を繰り返すなどの問題を抱えておられることも多いです。
  • こういった経済的な側面で、ご家族から協力いただくことは、患者さんの経済面への不安軽減のみならず、理解し支えてもらっているという多大な安心につながり、その安心が症状の改善など治療効果につながります。
  • これまでうまく言葉にできなかった患者さんの気持ちに、どうかよく耳を傾けて差し上げてください。そうやってご家族と信頼関係を築くことで、摂食障害の患者さんは安心を感じ、自信を持つことができ、その結果ストレスにも適切に対処できるようになり、ひいては症状も改善されていくでしょう。